この景色で見られる花の種類
教科書のこの景色が見られる場所は4月上旬の富山県朝日町です。遠くに見える山脈は,北アルプスで,この時期ではまだ雪が残っています。その手前に見える花々は,奥からサクラ,その手前の菜の花,さらにその前にはチューリップです。
いっぱんにサクラとよばれる木は,正確には和名でソメイヨシノという品種です。江戸時代に,サクラのなかまであるエドヒガンという品種とオオシマザクラという品種をかけ合わせてつくられたといわれており,それ以降日本全国で栽培され,ふやされてきました。富山県のソメイヨシノは毎年4月上旬に満開になります。
チューリップの開花時期はいっぱんに4月中旬から5月にかけてです。このままではソメイヨシノの開花時期と合いません。そこでこの場所では,ソメイヨシノの開花時期と合わせるために,3月下旬からさきはじめる早ざきのチューリップの品種を選んで,植えています。
「菜の花」の開花時期は,この地域の場合4月中旬ごろで,ソメイヨシノやチューリップよりはやや遅れることもあります。私たちが「菜の花」とよんでいるのは,植物の分類でいう「アブラナ」のなかまで,河原の土手などで私たちがよく見る種類は「セイヨウアブラナ」です。ほかに「セイヨウカラシナ」という種類や,菜種油をとるために畑に植えられる「キザキノナタネ」「ナナシキブ」という品種もあります。
この場所のアブラナは,もともと菜種油をとるために植えられました.菜種油とは,アブラナの種子をすりつぶして得られる油です。アブラナの種子は質量で約40%の油分がふくまれ,古くから油をとるために栽培されています。
チューリップの花のリサイクル
この場所に植えられているチューリップは,一度球根の状態で採取されて,また次の年にさかせるために植えられます。
球根とは土の中で成長するかたまり状の部分です。種子ではなく,チューリップの場合,葉に由来するつくりでできています。球根からはまた芽が出て,次の世代が育ちます。
チューリップの花をずっとそのままにしておくと,花が受粉して果実が成長し,その中に種子ができます。種子ができるまでおいておくと,果実や種子に養分が送られてしまい,球根には十分な養分がいきません。つまり球根が十分に育たないのです。それをさけるために,チューリップの花をつみとっています。
この場所ではチューリップの花つみが4月中に行われます。つまれた花は,捨ててしまうのではなく,ソメイヨシノの根本にまかれます。こうすることで,やがて腐ったチューリップがソメイヨシノの養分となるのです。