中学校 理科 2年 【2-1 化学変化と原子・分子 読み物 (p.68)】

原子(atom)の由来

古代ギリシアの哲学者デモクリトスは,紀元前420年ごろ,「りんごをしだいに分割していくと,これ以上分割できない小さな粒になる」と考え,この粒をアトモス(「分割できないもの」の意味)と名づけました。原子のことを英語でatom(アトム)というのは,このことに由来しています。
デモクリトスは「物質のちがいは,原子の大きさ,形,運動の状態などのちがいによるものである」と考えました。彼の原子についての考え方は思考のうえだけのもので,実験によって裏づけられたものではありませんでしたが,その後のヨーロッパの科学者に大きな影響をあたえました。
16〜17世紀に実験にもとづいた科学の研究が始まると,原子の理論も進歩をとげ,やがてドルトンの原子の考えへと発展していきます。


周期表を考えたメンデレーエフ

19世紀になると,いろいろな原子の質量が知られるようになり,これらの質量などをもとにして,原子の配列の表がいくつか考案されるようになりました。
ロシアの科学者メンデレーエフは,原子を質量の小さい順に並べると,原子の性質が周期的に変化することを発見しました。
彼が発表した原子の配列の表には空らんがいくつかありました。未発見の原子があるものと考え,空らんにしたのです。彼は,その未知の原子の性質などを予測しました。そして,後に発見されたゲルマニウムGeの性質などがほぼ彼の予測通りだったので,人びとを驚かせました。
このメンデレーエフの表をもとに,修正が加えられていって,現在のような周期表になったのです。

おだやかな酸化〜さび〜

金属には,鉄などのように,さびるものが多くあります。鉄のくぎなどがさびるのは,表面の鉄が空気中の酸素などとおだやかに反応して酸化鉄などに変わるからです。
また,10円硬貨(銅が主成分)が黒ずんでしまうのも,銅と空気中の酸素が化合して酸化銅ができるためです。銅像の表面にできる青緑色のものも銅のさびの一種で緑青といわれます。緑青は,銅と空気中の酸素,二酸化炭素,水がおだやかに反応してできます。

ラボアジェの発見〜燃焼のしくみの解明〜

ラボアジェは,1743年,フランスのパリに生まれました。ラボアジェは,若いころからすべてのものを正確にはかることに興味をもっていて,注意深くものの質量や大きさをはかり,それを細かく記録しました。多くの人びとにとっては,どうしてそこまで正確にものをはかる必要があるのかと思われるほどでした。
しかし,正しい実験と精密な測定によってこそ,科学がなりたつものであることを,ラボアジェ自身がだれよりもよく知っていました。
ラボアジェは,18世紀のヨーロッパの科学者たちの多くが信じていた燃焼についての「フロギストン説」に疑問をもちました。「フロギストン説」とは,「燃える物質にはフロギストンがふくまれている。燃焼とはフロギストンが物質からぬけ出すことで,残った灰はそのぬけがらである」という考え方でした。


この説について,ラボアジェは,「金属の燃焼では,ぬけがらの方が重いのはおかしい」と考えました。この原因を確かめるため,ラボアジェは燃焼の実験を始めました。精密な測定をするために,すべての実験を密閉したガラス容器の中で行うことにしました。
そして,密閉した容器の中で可燃物(硫黄やリンなど)を燃焼させる実験を行い,「燃焼とは空気中のある物質が結びつく現象である」ことを証明しました。さらに,その物質を「酸素」と名づけました。
こうして,ラボアジェによる精密な測定は,燃焼の現象を明らかにし,長年信じられてきた「フロギストン説」を根底からくつがえしたのです。
また,ラボアジェは化学変化のときの「質量保存の法則」も発見しました。この法則こそ,すべての化学反応式の基本であり,ラボアジェは「近代化学の父」とよばれています。
ラボアジェは,化学では輝かしい業績を残しましたが,税金を集める仕事をしていたため,フランス革命のときに捕らえられ処刑されました。

気体の酸素を必要としない燃焼

図のようにして,ドライアイスのくぼみに入れたマグネシウムに点火をして,ドライアイスのふたをかぶせます。
はじめのうちは白くかがやきますが,しばらくするとオレンジ色に変わります。これは,マグネシウムは,はじめはまわりの酸素と化合して白い光を放ちますが,やがてドライアイスである二酸化炭素分子の中の酸素原子と化合して,オレンジ色の光を出しながら燃えるからです。
このとき,二酸化炭素が還元されて,マグネシウムが酸化されています。


呼吸と有機物の燃焼

生物が生きていくためにはエネルギーが必要です。このエネルギーはどこから得られるのでしょうか。
植物は,太陽の光のエネルギーを利用して,光合成を行い,二酸化炭素や水などからデンプンなどの有機物をつくり出し,生きていくためのエネルギーを得ています。
動物は,植物がつくり出した有機物を体内に取り入れて生命を維持しています。
たとえば,私たちヒトの体内に取り入れられた有機物は,消化・吸収されて体中の細胞に運ばれていきます。一方,呼吸により肺から酸素が体内に取り入れられます。細胞に運ばれた有機物は,肺から取り入れられた酸素によって酸化されます。このとき,二酸化炭素や水とともに,熱が発生します。
こうして得られた熱によって体温が一定に保たれ,生命が維持されているのです。



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