中学校 理科 2年 【2-4 天気とその変化 読み物 (p.271)】

霜ができないようにするくふう

地表付近の気温が0℃以下になると,空気中の水蒸気が,地面や植物の表面で直接氷の粒になることがあります。これが霜です。
多くの農作物は,霜ができると低温に耐えられず傷んでしまい,出荷できなくなってしまうことがあります。そこで,農家では昔から農作物の近くで火を燃やすことで周辺の空気を暖め,霜を防ぐくふうをしてきました。
現在では,霜ができる地表より数m上の空気は少し暖かいことが分かっていて,この暖かい空気を「防霜ファン」で地表面付近に送りこんで,霜をできにくくしています。

からだが受ける大気圧

地球上で物体は大気圧を受けます。これは1平方cm当たり約10Nの力です。大気圧は,物体と空気の触れている面すべてに加えられています。
それでは,私たちのからだ全体では,どれくらいの力を受けているのか計算してみましょう。
計算を簡単にするために,下の図のような人間(厚みはないとする)のおおよその表面積を計算してみると,
50cm × 160cm × 2 = 16000平方cm
となります。1平方cm当たり約10Nの力を受けますから,からだ全体にはたらく力は約16万Nです。
これは,16トンの物体にはたらく重力の大きさと同じで,からだ全体でこのような大きな力を受けていることになります。それでも,私たちのからだが大気圧に押しつぶされることがないのは,からだの内側からも,大気圧と同じ大きさの力で押し返しているからです。


蒸発するときの熱の利用

液体の水が蒸発して水蒸気になるとき,まわりの熱をうばっていくため,まわりの温度は下がります。これを利用したのが,夏に行う「打ち水」です。道路に水をまくと,水が蒸発するときに道路の熱をうばっていくので,道路の温度は下がります。
近年では,屋外で霧をふき出して気温を下げる機器(細霧冷房)も用いられています。霧は空気中ですぐに水蒸気になります。このとき,空気の熱をうばっていくので,気温が下がるのです。


晴れた日の夜に気温が大きく下がるわけ

昼間に太陽によって暖められた地面からは,夜間,熱がさかんに大気中へと放出されています。雲があれば,この熱は上空へにげることがさまたげられて,気温が下がりにくくなります。一方,雲がなく晴れた日の夜は,熱は上空へにげていくため,気温が下がり続けるのです。


天気予報ができるまで

天気予報は,気象観測から始まります。地上では,全国約1300の観測所をネットワークで結んで自動的に観測を行う,「アメダス」(AMeDAS,地域気象観測システム)が活躍します。
また,上空の気象観測を行う気象観測気球を飛ばしたり,海上での観測を行うブイロボットを浮かべたり,気象レーダーの観測網で雨の激しいところを調べたり,宇宙から気象衛星で雲画像を得たりなど,気象観測の種類はさまざまです。
世界各国で行われる気象観測は,国際的なネットワークで結ばれてデータが共有されています。日本の気象庁の高性能コンピュータ(スーパーコンピュータ)には,国内だけでなく,国外からもデータが集められます。そして,データを処理して,その日の天気図などを作成します。
スーパーコンピュータは,地球全体の気象観測データを科学法則の数式によって計算し,局地的な大雨などの小規模な気象の変化から,数カ月後の地球の大気の状態までも予測できます。
気象庁の予報官や気象予報士は,スーパーコンピュータが作成した資料などをもとに,各地のきめ細かな天気予報をつくっているのです。
このようにしてつくられた天気予報は,アジア諸国にも提供されていて,日本の気象要素の情報収集能力や予報作成能力は高く評価されています。


天気予報で聞く用語

天気予報で使われる用語には,次のようなきまりがあります。

●大気の状態が不安定
地上付近に暖かい空気があり,上空に冷たい空気があると,2つの空気が急に入れかわろうとします。このような状態を「大気の状態が不安定」といいます。このときは,雷雨や集中豪雨が起こりやすいので注意が必要です。

●「〜時々雨」,「〜一時雨」,「〜のち雨」
天気予報は時間を区切って,その時間(予報期間)の中で,予想される天気の変化を表現します。
時々雨 … 雨が断続的に降り,降っている時間が予報期間の1/2未満
一時雨 … 雨が連続的に降り,降っている時間 が予報期間の1/4未満
のち雨 … 予報期間の途中から雨になる

●降水確率
過去の大気の状況と,そのときに雨(または雪)が降ったかどうかの記録から,大気がある状態になったとき,どのくらいの確率で雨が降るかを求めることができます。
これを現在の大気の状態に当てはめたのが降水確率です。この確率は“1ミリ以上の雨が降るかどうか”であり,雨の量が多いか少ないかは表していません。

●注意報,警報
注意報や警報は,過去の気象状況と,災害が起こったときの関連から次のように決められています。
注意報 …… 災害が起こるおそれがある
警報 ……… 重大な災害が起こるおそれがある
特別警報 … 重大な災害が起こるおそれがいちじるしく大きい

●冬日,真冬日,夏日,真夏日,猛暑日
日中の最低気温や最高気温で,次のように分けられています。
冬日 …… 最低気温0℃未満
真冬日 … 最高気温0℃未満
夏日 …… 最高気温25℃以上
真夏日 … 最高気温30℃以上
猛暑日 … 最高気温35℃以上

風の名前

日本の各地域で,季節によってふく風にさまざまな名前がつけられています。これは,風が農業や漁業など,私たちの生活に影響をあたえてきたからです。
あなたの地域にも,生活に影響をあたえてきた風があるか調べてみましょう。


春一番

シベリア高気圧の勢力がおとろえると,日本海に低気圧が西から進んできて発達し,そこに向かって南からの強い風がふくことがあります。立春(2月4日ごろ)を過ぎてはじめてふく,暖かく強い南風を「春一番」といいます。
「春一番」という言葉は,長崎県の漁師の間で,海難事故を引き起こすような春先の強風をさして使われ始めたといわれます。この言葉は,季節のたよりであるとともに,災害予防の情報でもあるのです。


冷 夏

気温の低い夏を「冷夏」といいます。太平洋高気圧が弱く,オホーツク海高気圧が強いと,梅雨が明けず,北日本や東日本を中心に冷夏となることがあります。特に,オホーツク海高気圧から東北地方の太平洋側にふき寄せる冷たくしめった風は「やませ」とよばれ,農作物の生育をおくらせるなどの被害をもたらします。


地球規模の大気の動きと日本の天気

日本の特徴的な天気は,地球規模の大気の動きに関係しています。

●冬のジェット気流とシベリア高気圧
中緯度地域の上空を西から東にふく偏西風で,特に風速の大きい流れを「ジェット気流」とよんでいます。ジェット気流の位置は季節によって異なり,つねに蛇行しています。冬のジェット気流は,図Aのように,シベリア地域で南に向かい,この地域に高気圧(シベリア高気圧)が発達しやすくなります。

●初夏のジェット気流とオホーツク海高気圧
ヒマラヤ山脈は8000m級の山が連なり,ジェット気流がふく高さに達しています。初夏には,図B(a)のように,ジェット気流がヒマラヤ山脈の西側からぶつかって,南北の2つの流れに分かれます。北のジェット気流はオホーツク海付近で南に向かい,この地域に高気圧(オホーツク海高気圧)が発達しやすくなります。

●モンスーンと梅雨
春から夏にかけて,インドや東南アジアでは,「モンスーン」とよばれる南西からの季節風がふいています。このころ,大陸中央部が熱せられて,広い範囲で上昇気流が生じ,これをおぎなうために,南シナ海やインド洋から多量の水蒸気をふくんだ暖かい空気が大陸中央部に向かってふきます。この暖かくしめった季節風がモンスーンです(図B(b))。
モンスーンは多量の雨を降らせることから,東南アジアなどではこの季節を「雨期」といいます。この季節の雨は,稲作にとって欠かせない水を供給しています。
この暖かくしめった空気の一部は,日本付近にも流れこみ,梅雨の時期は,この空気により,特に西日本に大雨が降りやすくなります。

●低緯度の大気の循環と太平洋高気圧
低緯度地域には,赤道付近で暖められた空気が上昇してできる循環があり,この空気が下降するところでは太平洋高気圧ができます。この循環は初夏から発達しはじめ,太平洋高気圧が西にはり出してきます(図B(c))。
夏には,ジェット気流は北上して日本よりも北にあり,はり出した太平洋高気圧が日本をおおいやすくなります。


大気や海水が熱を運ぶ

●大気の大循環による熱の移動
地表が太陽から受け取る熱の量は,1年を通して低緯度で大きくなります。この熱が,地球規模の大気の動き(大気の大循環)を引き起こし,低緯度から高緯度へ熱が運ばれています(図A)。
低緯度では,暖まった空気が上昇して高緯度側へ熱を運びます。これに対して中緯度では,蛇行する偏西風の低緯度から高緯度へ向かう流れなどが熱を運んでいます。


図A

●台風が運ぶ熱
赤道付近で暖められた海水はさかんに水蒸気になり,大気に水蒸気を供給します。この大気が熱帯低気圧(台風)となって,高緯度に移動して雨をもたらします。水蒸気が雨になるときは,水蒸気から熱が放出されます。台風は,図Bのように低緯度から中緯度に移動するため,赤道付近で地球が受けた熱を中緯度へ運んでいることになります。


図B

●海水による熱の移動
大気だけでなく海水も図Cのように循環しています。
赤道付近で暖められた海水は,暖流となって高緯度に向かって流れ,熱を高緯度へ運びます。一方,高緯度で冷やされた海水は,寒流となって低緯度に向かって流れ,再び暖められます。このような海流の動きによって,低緯度から高緯度へ熱が運ばれているのです。


図C

天気を予想する昔の人の知恵

現在のような天気予報が行われるようになったのは,情報通信技術や人工衛星による観測技術の発達したごく最近のことです。昔の人びとは,雲のようすを観察したり,空の色,朝焼けや夕焼けの色,太陽や月の見え方などを調べたりして,長い経験から地域の天気を予想し,その経験をことわざに残していました。
たとえば,「夕焼けに鎌を研げ」ということわざは,夕焼けが見られた翌日は晴れて農作業がやりやすいから,鎌を研いで作業に備えるという意味です。夕焼けが現れるときは,自分のいる地域より西の方に太陽をさえぎる雲がないときです。天気が西から東へ移り変わることを考えると,晴れの予想が成り立ちます。
また,「山がかさをかぶると雨」ということわざも全国に広く見られます。これは,山の斜面による上昇気流で雲が発生しているようすを表します。雲ができない日に比べて,しめった空気が入りこんでいることが考えられ,雨が近いという予想が成り立ちます。
このように,昔の人びとの知恵として伝えられる天気のことわざの中には,現在でも通用するものがあります。


©2019 学校図書株式会社     >もくじトップ<     >推奨環境<     >使い方の注意<